懐かしい手料理

故郷でしか食べられないものがある。
小さい頃は嫌というほど食べさせられて、うんざりしてもう食べたくないと思ったものもある。
大きくなって故郷を離れ、食べる機会がなくなると途端に恋しくなる。もう二度と食べられないものも多々ある。
今でも懐かしい故郷の味として、まだ食べられるのは山菜とりんごくらいだろうか。毎年父親が送ってくれるのでありがたいことだ。
父は山が好きなので、春には山菜、秋には大量のきのこを採ってくる。山菜は春の訪れを感じさせるものであり、天ぷらにしたり、おひたしにしたり、おこわで炊き込んだり、とにかくたくさん食べた。ほんのり苦い山菜が冬の間で体に溜まった毒素を抜いてくれるような気持ちになる。
春から秋に通してはイワナだ。今はあまりしないけれど、父は渓流釣りも好きで、たくさん釣ってくるのだ。はらわたをとったイワナが冷凍庫の中にたくさん入っていた思い出がある。けれど、川魚はせいぜい食べて1匹である。たまに田舎の旅館や民宿に行って塩焼きで食べるくらいがおいしいけれど、毎日毎日では飽きる。
どんどん釣ってくるからたまっていく一方で消費するのが大変だったと思う。イワナは懐かしいとは思うけれど、今でもまた食べたいとは思わない。
秋のきのこも懐かしい。秋の名物芋の子汁は、たくさんのきのこを入れるのが定番だ。都会では絶対にお目にかかれない、天然物の香り豊かなきのこがたくさん入った芋の子汁はもう食べられることはないだろう。
新鮮なりんごも故郷の味だ。秋になると農園から少し悪いりんごを袋いっぱいに安く買ってきて、冬の間食べる。
寒さで少しシャリシャリに凍ったりんごもおいしいけれど、新鮮でパリパリのりんごを丸かじりするのが大好きだ。
残念ながら都会のスーパーでは絶対に手に入らない。
ありがたいことに私の好きな紅玉を毎年父が送ってくれる。故郷の秋を感じられるりんごだ。